先日読んだ Yahooニュースの記事 によると、冬場(12~3月)の死亡率は、夏場の死亡率よりも10~15%以上も高いそうです。思い返してみると、私の祖父が亡くなったのも3月でしたし、奥さんのお祖母さんが亡くなったのも2月でした。他にも冬場に亡くなった知り合いが何人もいます。
やっぱ気温のせいなのかなァと思うじゃないですか。でもハワイなど一年中温暖な地域でも、冬になると死亡率が10~15%も上がるそうです。気温説やウィルス説、日照時間説などありながらも、今のところ原因は不明なんだとか。不思議ですね、、、面白いですね!
雪国に暮らす私たちにとって、春を迎えるために、乗り越えなければならない最後の試練が2月です。能代は秋田の中でも比較的雪が少ないエリアなので、その点では楽といえば楽なのですが、代わりに日本海から吹いてくる強風・暴風に凍えながら、日々仕事に精を出しています。3月まであと3週間。春は確実に近づいてきています。
さて現在当社の工場は、今年も製造の最盛期を迎えており、連日連夜、業務に明け暮れています。中でもこの冬は、最高級の材料を使った障子や襖などの本格的な和風建具の注文が多く、ベテランの職人たちにとっては腕の見せ所、若手にとってはまたとない経験を積める機会が訪れています。
そんな工場の中で、ある日ふと、目に留まったこの道具。
これ、何だと思いますか?
真鍮製で、成人男性の手の中にすっぽり入るくらいの大きさ。筒の部分をマスキングテープでぐるぐる巻きにしていて、いかにも使い込まれている道具の風格が漂っています。
針のない注射器のようにも見えますが、、、いや、むしろこの独特の雰囲気は、必殺仕事人が繰り出す殺しの道具のような、そっちの方の雰囲気ですね。この先から針が出てきて脳天から「ドグサっっ!!」みたいな。仕事中に仕事だぜ!??
ためしにお尻の部分を親指で押し込むと、先端から鈍い突起が!やはり!!
でもこれだと一撃で暗殺するは難しいですね、、、痛めつけるには向いているかもしれませんが。では一体、何のための道具なのでしょうか。
正解は、襖の引手を固定する小釘を打ち込むための道具になります。襖の引手って、写真のように、引手の窪んだ内側の上下から釘を打ってとめているんですね。
皆さんの家庭にある襖や引戸の引手もこのように固定されているので、なンか最近引手が緩んできたな、、と感じたら、釘が抜けていないかチェックしてみてください。
引手の穴。入れる前に、ぼさぼさになっている襖紙の切断面を指先で丁寧に均していきます。このような些細な仕事ですら、ベテランと若手では指先の滑らかさが全然違います。
打ち込む前の状態。
長さ10mm程度の釘ちゃん。
引手の値段は安いものだと400円程度、上は10万円以上するものもあります。時には襖本体よりも引手の方が値が張るも場合も。
しかし、良い引手やハンドルを使うと、建具だけでなく、空間全体の雰囲気、グレードを引き上げることができるので、引手選びは手が抜けないポイントです。
襖の四方の黒縁、正しくは縦框(たてかまち)、横框(よこかまち)に、組み立てるための溝を掘って、木工ボンドを入れているところ。
組み立て機にセットして、圧力を加えて組んでいきます。
小さなものから大きなものまで。これらの襖は、写真のような伝統的な工法によって作られる「本襖」と呼ばれる製品になります。
近年では、ベニヤ製の戸板に襖紙を貼って簡易的に作られる「戸襖」が主流になっている中で、当社でも久々に本襖を作っています。何とその数2000枚!!今年夏オープン予定の、日本を代表する高級、老舗旅館の新築プロジェクトに使われます。
今回使われている襖紙は最高級の「江戸からかみ」。
襖紙選びも、仕上がりを左右する重要なポイント。襖紙については別の機会に改めて記事にしようと思っていますが、種類やデザインが大変豊富で、奥が深く面白いです。
襖紙をきっかけに和室の魅力に目覚めていく人は多いのでは、と思っています。
材料に触れる職人の手や指先を見ていると、その人の仕事への思い入れや考え方が伝わってくるんですよね。優れた職人の指先は、楽器の演奏者の手の動きに通じる美しさがあるように感じます。
手は、人にとって最高の道具。当社の職人たちが、今後も存分に自分の手を使って仕事ができる環境を守り、発展させていきたいです。