こんにちは、社長の能登です。
木材を使ってものづくりをしている企業人の端くれとして、読者の皆様の生活に役立つ木の話や、ちょっとした雑談のネタになる、、、かも知れない木の話を、今後少しずつしていきたいと思います。第一回目は木の香りについてです。
様々な木の香り
日頃から当社には多くのお客様が打合せや製品検査、見学などで訪れますが、工場をご案内すると、必ずといってよいほど皆さん最初に言われるのが「木の良い香りがしますね!」という言葉です。
会社の私たちはもう嗅ぎ慣れて、かなり鼻がバカになってしまっているので、意識しないと ほとんど何も感じませんが、外から来た方に言われると、やっぱりそうなのか、と思います。
木の香りをテーマにしたフレグランスは昔から数多く存在しますし、スギやヒノキの香りに満ちた和室の中にいるだけで、心がとても穏やかになりますよね。
逆に「うっ、、、」と思わず鼻をふさぎたくなるような、個性的な臭いもあります。個人的にはホワイトオークやケヤキなどの広葉樹の香りは結構キツくて苦手ですね。靴下を脱ぎたての足の裏のような酸っぱい香りが目に染みます(涙)
ちなみに好きな木の香りは松ヤニの香りです。粘膜がヒリヒリしてきそうなスパイシーで、濃いねっとりした甘い香りがたまりません。少し変態的ですが。
香りを形作る精油成分
そもそも木の香りって何なのかという話ですが、それは樹木の中に含まれる精油の香りです。精油に含まれる代表的な化合物を挙げると、次のようなものがあります。
・テルペン類(αピネン、リモネン、サピネン、ヒノキチオールなど)
天然香料の主成分、清々しい木材特有の香りのもと。
脳の前頭前野に働きかけ、緊張や不安を和らげる効果がある。
・リグナン
香りに渋み、深みを与える他、抗酸化作用によって木材の耐久性に寄与する。
これら精油成分の他に、フェノール化合物も混ざり合わさって、まるで森の調香師のように、それぞれの木が自分の香りをまとっているのです。何のためかといえば、その香りによって細菌や害虫を遠ざけ、腐れから身を守り、何十年、何百年と生き続けていくためなんですね。
しかし一方で、その香りは人間にとっては不安を緩和したり、リラックス効果があったりして、まるで木が人を引き寄せているようにも感じます。植林や間伐など、昔から人がある程度手を入れて、整備することで森が繁栄してきたことを考えると、樹木も人を必要としているからなんですかね。
インスタント檜風呂
木の香りといえば、当社ECサイトからshinbokuの製品をお買い上げの際、日頃の作業で出るヒノキのカンナ屑を緩衝材として利用しておりますが(※)、箱を開けると清々しいヒノキの香りが漂い、大変ご好評をいただいております。
これを再利用した裏技を、先日お客様から教えていただきました。その名も「インスタント檜風呂!」。楽しみ方をご紹介させていただきます。
(※)組子キット等の簡易包装で出荷している製品には使われおりません。
初めに、果物栽培などで使う虫除け用の目の細かいネットを用意します。
次に、箱から取り出したカンナ屑をネットの中に入れ、中身がこぼれ出ないようにしっかり縛ります。以上!
これを湯船に入れると、お風呂場がヒノキの優しい香りに包まれて、とてもリラックスできます。添加物等は一切含まれておらず、お肌にも優しいです。
カンナ屑の代わりに、ヒノキの端材を入れても良いと思いますが、おが屑はお湯が汚れたり、排水溝が詰まる恐れがあるのでお勧めしません。
最後に、人を心地良くさせ、抗菌、防虫効果にも優れた木の香りですが、残念ながら長持ちはしません。加工してからせいぜい半年、1年もすると、木の表面からは、ほとんど香りを感じなくなってしまいます。
しかし数百年前に伐採・加工された木材や、地中に1000年以上埋没していた丸太であっても、一たびノミやカンナで表面を削ると、まるで昨日まで生きていた樹木のような、新鮮な木の香りが漂ってきます。
昔、当社の創業者である祖父がよく言っていましたが、樹木に生物としての寿命や死はあっても、木を製品に加工し、手入れしながら丁寧に使い続けることで、半永久的に木を生かし続けることができます。木を切り、正しく使うことは、最終的には森を生かすことにつながるのです。
人と森林がお互いを必要とし、共存し続ける未来を目指して今後も魅力ある製品を作って行きたいです。
参考文献「コンサイス木材百科」 秋田県立大学木材高度加工研究所 編