秋田県能代市の世界に誇る魅力を発信

能登 一志

THIS IS NOT A RAMEN REVIEW

THIS IS NOT A RAMEN REVIEW

我々日本人はラーメンが大好きだし、ラーメンの情報を求めている人は世の中に大勢いるってことが、SNSを利用しているとよく判ります。

このウェブマガジンを始める前にも、カテゴリの一つとしてそういうのはどうか?という話が実はありました。アクセスを稼げるなら良いか、、と一瞬思ったりもしましたが、内心ちょっと違うな、という気もしました。

なぜなら、私自身がラーメンよりも、ハンバーガーやパスタやお菓子の方が好きだから!と言う理由もありますが、ラーメンだけでなく、映画も服も音楽も家電製品も、あらゆる物がすでに語り尽くされてしまっている昨今、今さら自分がやる必要があるのか、、と感じてしまうことばかりだからです。悲しみ。

その点、「木製建具」は程よくマニアックで、まだ語るべき余白が残されているように感じ、これを中心にいろいろ話を広げたら、少しだけ新しい(変な)ことをやれるかも知れない、、と思い、勇気を出して始めました。
なのでこれは、ラーメンレビューではありません、という前置きです。

味とのれんを大切にする店

さて、能代を代表する素晴らしい食べ物はたくさんあると思いますが、「能代のソウルフードって何?」と聞けば、それは「吾作ラーメン!」と答える方が少なくないのではと思います。それくらい、昔から能代で親しまれ、いつでも手軽に食べられ、しかも安定して美味しい地元の味です。

でも吾作に行って何を注文するかについては、そこそこ意見が分かれるテーマです。味噌と醤油が人気を二分しているような印象ですが、私は吾作といえば、ほぼ醤油です。ここは絶対と言いたいところですが、、あえてのほぼ。継続率97%!くらいの確率、という意味で。

味とのれんを大切にする店

この底を見せない醤油スープの色の濃さも意見が分かれるところですが、個人的にはこれが良いんですよね。でも味は、見た目よりはしょっぱくないです(東北人基準で)。しょっぱさの中に甘みがあり、それが東北人の味覚に絶妙に寄せてきているように感じます。

今から十数年前、ある会合で、当時の吾作の社長さんと同席したことがありました。我慢できなくなって「醤油ラーメンが大好きなんです!」と告白したら、「そうかそうか、、」と言って、面白いことを2つ教えて下さいました。

エスビーコショー・マジック・オーケストラ

一つ目は、「醤油ラーメンにコショーを入れると味がまろやかになる」

ということ。吾作と言えば、昔からずっとS&Bのコショーがカウンターやテーブルに置かれていますが、これを醤油ラーメンに適量ぱらぱらと振りかけるとアラ不可思議!醤油のしょっぱさの角が取れて、とてもまろやかに、食べやすくなるんですよ。

ピリリとスパイシーな粉を、しょっぱい醤油スープに混ぜたら味がまろやかになるなんて、いったい誰が予想できるかという話。なんて素敵なコショーマジック!味のオーケストラ!略してK・M・O。

「はじめは何も入れずに味を楽しんで、中盤からコショーを入れることで、最初から最後まで飽きずに食べられるんだよ」

という社長のお言葉、なるほどなと感心しました。

余談ですが、ラーメンと一緒に餃子を頼まれる方も多いと思いますが、タレは醤油・酢・ラー油が基本ですよね。でも醤油を入れず、酢とコショーとラー油で食べるとサッパリして美味しい!我が家の定番です。

醤油スープは仕上がりのバロメーター

二つ目は、「醤油ラーメンのスープを味見すると、その日のダシの良し悪しが分かる」

という謎めいた一言です。「味が安定しない」という話ではないのは当然として、その時に深く掘り下げてお聞きしなかったのが、今では大変悔やまれます。

ここからは単なる素人の想像ですが、「味噌ラーメン」の場合は、味噌自体の味が強いので、ダシの良し悪しというか、味に多少の揺らぎがあっても、作り込んだ味噌ダレの風味で上書き補正が可能なのでしょうか。
吾作といえば味噌!というファンの方が多いのも、味噌ダレの安定感からくる美味しさなんですかね。

他方「塩ラーメン」は、シンプルにダシの旨みや、方向性が勝負の決め手という気もするので、醤油よりもストレートにダシの良し悪しが分かってしまうようにも思いますが、、でも逆に、確かな素材と、作り込まれたレシピ、そして完成された塩ダレがあれば、良くも悪くも大きくは外さないというか、「味の骨格」自体はそれほど変わらないってことなのでしょうか?
謎ですね。

塩ラーメン

ちなみに、うちの両親はいつも塩でした。
特に父は、若い頃はよく「塩バター」を頼んでご満悦にしていましたが、バターを入れると見た目の贅沢感と、スープのコクが増して、それが美味しいのはよく分かります。うちの奥さんなどは、基本的に何の料理にでもバターを入れたがりますしね、、、

でも逆に、バターを入れると味の輪郭が若干ボヤけてしまうのが勿体なく感じることもあり、たまに入れたくなるけど、少し悩んで、結局入れない方が自分は多いです。

バター

と言ってもバターの存在感はやっぱり尊すぎる

そこにきて「醤油ラーメン」は、社長をして「その日のスープの良し悪しが分かる」と言うほどなので、多分本当にそうなんだと思います。
実際、「今日の醤油は何かめっちゃ美味い、、、!」という日があるし、そういう会話をよく耳にします。

これも想像ですが、良し悪しと言っても、日によっては不味い、というわけではなくて、素材や条件が揃って、特に美味しく出来た時の味の完成度が、味噌や塩よりも分かりやすい、という話なんではないかなと。それが何故なのかは、正直私レベルには判りません、、
ラーメンは手軽に味わえる庶民の味と言っても、実に奥が深いですね。

そもそも創業から60年間も、飽きられることなく大勢に食べられているということは、昔よりも今の方が美味しくなっているということです。これは想像ではなく、確信があります。

どんなに美味しいご馳走でも、同じものを出し続けられると、いずれ飽きられてしまいます。うちは味を変えない!というお店だったとしても、「変わらず美味しい、、」と思わせるための工夫は、常にアップデートし続けているのではないでしょうか。

それはラーメンだけでなく、あらゆることに通じる話ですよね。自分たちのものづくりも、伝統的で、普遍的な美を追求しつつも、その作り方や、作るもの、そして見せ方は、変化する時代の中で磨き続け、探究し続けなければならないと思っています。

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能登 一志

能登 一志

社長

株式会社大榮木工の代表の能登です。
三代目の視点で、自社の過去と未来の物語をお伝えします。
また自社製品や職人たちのこと、故郷の風景、不思議スポットの紹介がメインになります。よろしくお願いいたします。

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