
引用元:https://baian-movie.com/
何年か前に「鬼滅の刃」が大ヒットした頃、当社のスタッフの一人が、
「ストーリーよりも画面に出てくる建具の方が気になる」
と言っていました。さすが建具屋です。何となくイメージだけで描かれているものと、ちゃんと調べて描いているものとでは、一目見て、その違いが分かるのがプロというもの。
最近観た映画の中で、個人的に、これはすごいなと感心したのが「仕掛け人・藤枝梅安」の、劇中の様々なシーンに出てくる障子や襖などの和風建具です。
建具にかなり詳しいアドバイザーの方が協力しているのでは?と思うほど、見る人にそれぞれのシーンを深く印象づけ、また登場するキャラクターの感情、人間性を描く上で、これ以上ないくらい効果的に建具が使われていました。


真意がどこにあるのか分からない、不穏な空気
他にも魅力的で印象的な様々な障子、襖が出てくるので、気になる方はぜひ一度ご覧ください。
部屋に外光を取り入れたり、外の景色を楽しむための機能が建具の基本機能とすれば、「空間を定義し、人の考え、印象を操ること」が、建具に隠されているもう一つの重要な機能です。それを分かっている人にしか使えないような使われ方をしていたので、建具屋として大変楽しめる映画でした。
もちろんストーリーも骨太。池波正太郎節とでもいうべき、善と悪の両方の貌を持っている人間という存在の多面性が生み出す、おかしさや悲しさに満ちた物語は、普遍的に人の心を打ちます。
でも真昼間の葬式での仕掛けのシーンとか、参列者に気づかれないワケないだろ、、というツッコミどころもあったり、そもそも針一本で本当に人が即死できるのか?という点などが、理屈っぽい自分には気になってしまうところですが、そういう意味では、相棒のヒコさんのように、自分も仕掛け人なら絶対毒を使うだろうなと思いました。(何の話?)
しかし全体的には大変良くできていて、おすすめです。大人が見るべき娯楽作品としての「本格時代劇」とはこうあるべき、という見本のような作品だと思いました。