4月に入っても朝晩は寒い日が続いていますが、今年の秋田は桜の満開予想が4月15日頃だそうです。数年前まではGWに弘前へ桜を見に行くのが楽しみでしたが、近頃はGWには桜は散ってしまっています。年々、桜の開花が早くなっていますね・・・この先どうなるのでしょうか?
ということで、「名刺入れデザイン秘話」の後編をお送りします。
前回は名刺入れをデザインする上で、どのような課題が出てきたかをお話ししましたが、今回はその課題をどのように解決したかお話ししたいと思います。ぜひ、ご一読ください!
キャラメル箱方式
まず最初に悩んだのは、カバーの開け閉めについて、どのような仕組みにするか?という点です。2パターンの案を考えてみました。
一つは某お菓子メーカーのミルクキャラメルの箱のような引き出しタイプです。保育園に通っていた頃、迎えに来てくれた祖父がよく駄菓子屋さんで買ってくれた思い出のお菓子ですが、あのような形で名刺入れを収納する本体と、それを覆うケースとが分かれている構造はどうかと考えました。

形をイメージして模型を作ってみましたが、本体とケースが二重になると、その分の板の厚みが増してしまい、かさばって不便だなぁ、、と感じました。


さらに、持ち歩く際にカバンの中で名刺がバラけてしまわないようにするには、本体とケースをぴったりの寸法で作らなければなりませんが、部材の一部分だけでも反ってしまうと、ケースに本体が入らなくなり使えなくなってしまうため、残念ですがこの案は却下となりました・・・
たまて箱方式
二つ目のアイディアは、フタがパカっと開閉するタイプ。結論から言うと、これが現在の形になっていくわけですが、初期の形は引き出しタイプ同様、かなり分厚くて全然コジャレないものでした。

初期案では自分の名刺と、頂いた名刺を分けて収納できればいいなと思い、カードホルダー部分を2つに仕切れるようにも考えてみたのですが、さらに分厚くなってしまい持ち歩きには不向きだと考えました。
標準的な厚みの名刺が20枚ほど入るようにしながら、全体の部材をギリギリの薄さまで調整し、持ち歩きにコンパクトなサイズにしました。
プロトタイプは組子の裏にも板を貼っていたため、さらに分厚くなっていましたが、裏に板を貼らないことで全体を薄くコンパクトに仕上げられると同時に、抜け感が生まれ、より洗練されたデザインになりました。

また見た目にはわからないのですが、磁石を内蔵することで、カバンなどに入れても名刺がバラバラにならず、かつフタを閉じた際にカチッと良い音がするように工夫しました。
さらに部材の貼り合わせもトメ(角を45度で貼り合わせること)にすることで、小口の美しさにもこだわりました。
こだわりのV字貼り
それから、秋田杉の使い方にもこだわりました。秋田杉はやはり柾目が美しい木材なので、組子のラインに合わせ、木目がVの字になるように、綺麗に貼り合わせました。
プロトタイプと製品版の比較。プロトタイプは木目が横になるように貼っていただけですが、やはりVにした方が製品としてのクオリティが上がります。
カードホルダー部分の秋田杉の板は厚みが2mmしかなく、通常薄い木材というのは反りの原因になってしまいますが、ベテランの職人が反りを出にくいところを選んだり、反りが出ないような板の貼り方をしています。
また、組み合わせる本体部分の木材の色によって、赤身と純白を使い分けています。

材種選び
シンプルで美しいものを作りたかったので、1つの名刺入れに使う木材は2種類までと決めました。
当初は秋田県産材だけを使う案もありましたが、そこにこだわりすぎると自分たち作り手の自己満足になってしまう可能性もあり、使っていただく方や、使うシーンを想像して、時間をかけて使う材種を選びました。
最終的には秋田県産材と、世界各地の色とりどりの木材を組み合わせることでオリジナリティあふれる製品になったと思います。

製品化とその後
プレゼントの企画として始まった取り組みでしたが、お渡しした方がとても喜んでくださり、ぜひ製品化してくださいとおっしゃってくださったので、shinbokuのローンチに合わせて、発表することができました。
ほぼ手作りの製品ですので、なかなかのお値段になってしまい、売れないのでは、、、という心配をよそに、今ではブランドの看板商品として、多くの方に使って頂いています。イベントなどで「名刺ケース使ってますよ!」と見せてくださる方もいて、本当に嬉しく思っています。
また、私の大学時代の恩師に名刺入れを初めて見ていただいた時、「これは世界最小の建具だね」とお話ししてくださいました。様々なところに当社ならではの技術とアイディアが詰まっており、まさに当社だからこそ作れる製品になったと思っています。
今後も皆さまに喜んでいただける製品づくりに取り組んでいきますので、引き続きどうぞよろしくお願いしたします!