秋田県能代市の世界に誇る魅力を発信

能登 一志

富根報徳番楽

富根報徳番楽

夏祭りダイジェスト!とか言っているうちに、季節は瞬く間に冬、、来週から平地でも雪の予報の秋田です。
この数年で、本当に秋が短くなってしまったと感じます。このまま異常気象や環境の変化が続いてゆくと、いずれ秋祭りは夏祭りに編入されてしまうのだろうか??などと考えていたら、会社の品質管理担当のコナンくんに、地元の集落の秋祭り「富根報徳番楽」に誘われて富根の愛宕神社まで見に行ってきました。初めての体験でした。

富根愛宕神社本殿
富根愛宕神社本殿

そもそも番楽とは、その地域地域に伝わる豊作祝いなどの神楽、民俗芸能のことで、山伏などの山岳信仰と深い繋がりがあるそうです。平成5年の調査では、秋田県内の集落140ヶ所で確認されたそうですが(※)2024年現在は一体どのようになっているのでしょうね。

※「秋田の民俗芸能 番楽を踊る」大高政秀著 北羽新報社より

富根報徳番楽は、富根地域のすぐ脇を悠々と流れる米代川の上流の阿仁地域から、天然秋田杉と一緒に筏に乗って伝わってきた文化と言われており、今日、木材産業に従事する者の端くれとして、知っていなければならない重要な文化・伝統の一つというわけです。
が、コナンくんに朝礼のスピーチで教えてもらうまでは、自分たちのものづくりと繋がりがあることを全く知りませんでした・・。

機械を使って仕事中のコナンくん
機械を使って仕事中のコナンくん

コナンくん(本名)は、自分が生まれ育った富根地域の番楽を故郷の誇りと思い、その伝承に励んでいる、今時の若者にしては骨のある子です。能代・二ツ井地区で行われる様々なイベントで舞を演じているそうですが、今回はトップバッターとして「鳥舞」を披露。つがいの鳥の雌の方がコナンくんです。

富根報徳番楽

富根報徳番楽

近頃は女形を演じることが多いらしく、女性らしい仕草について日々試行錯誤しているそうです。鶏や雉のように見える冠と装束ですが、コナンくんのキャラクターのせいか、個人的にはスズメのようにも見えました。ちゅんちゅん。コナンくんお疲れ様でした。

富根報徳番楽

鳥舞に続いて、おかめの面を被った演者が登場し「女舞」を踊ります。脇毛が荒々しいですが、江戸時代頃の女性は脇毛の処理ってどうしていたのでしょうね。浮世絵などを見ると結構毛だらけですが、ある意味こういうところにも土着文化ならではの生々しさや力強さ、そしてエロティシズムが感じられてイイなと。

女舞は農家の女性の逞しさや大らかさ、そしてほんのり間抜けさというか、コミカルさがあって良かったです。田舎のお母ちゃんのイメージなのでしょうか。ちらちら見え隠れする脇毛も相まって、とても良い味を出していました。

富根報徳番楽

幕間では、次の演目の説明や、演者に上がった「花」の目録が読み上げられます。このとき、「金三万円也 **様」と書かれた紙がステージ脇に飾られるのですが、皆さん気前が良いなあと思って見ていたら、桁を一個上乗せして張り出すのが慣わしであることを帰った後で知りました。お金以外にも「**様、いちじく軽トラ一台分!」みたいに読み上げられていて、す、すごい量だなーーー!と思ったら、、騙された><
地域のお祭りならではのご愛嬌なんでしょうね。

富根報徳番楽

さらに演目は進み「翁舞」。実る稲穂を愛でるような翁の慈愛に満ちた舞に心奪われました。同時に衣装の使い方がすごく上手で、身体の動きに合わせて優雅に流れる着物のドレープが抜群に美しかったです。

富根報徳番楽

富根報徳番楽

催しは夕方まで続いたそうですが、午後から別の予定があったので頃合いを見て現地を後にしました。老若男女が一つになって地域の伝統を守っていく姿と、集落の外から見にきた人々も一緒になってご飯を食べて祝祭を楽む姿に心打たれました。地域の人口減少によって、おそらくギリギリのところで続けているのだと思いますが、コナンくんには仕事と同じくらい頑張って、番楽を受け継いでいって欲しいですね。

富根報徳番楽

富根報徳番楽

来年はぜひ富根愛宕神社まで足をお運びください。

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能登 一志

能登 一志

社長

木製建具の専門メーカー「大榮木工」の三代目代表取締役、shinbokuのディレクターです。
建具の話、木の話、業界の話、ものづくりの話、民俗などがメインになります。
趣味は料理、写真、映画鑑賞など。よろしくお願いいたします。

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