



能代スポーツセンター・高橋和彦さんインタビュー
好きだった場所を、引き継ぐことになった
――高橋さんの原点について聞かせてください。最初にここに来たのはいつ頃ですか。
高橋さん
初めてここに来たのは、たぶん高校2年の頃かな。もともと生まれは東京、世田谷です。父は秋木工業に勤めていました。会社の方針で能代に転勤になり、家族で移り住んだということです。大学に入ってからは、春休み、夏休み、冬休みに短期バイトで入っていました。
――ご出身は能代だと思っていました。シティーボーイだったんですね!バイトの頃は、どんな仕事をしていたんですか?
高橋さん
やることは普通の社員と同じよ。フロント、フロア。あとオイルも敷いていました。今みたいに重い機械じゃなくて、一人で操作できるものでしたけどね。
――ボウリング自体も好きだったんですか?

高橋さん
そりゃあ、もう。大学の頃は高田馬場に住んでいて、すぐそばにシチズンボウルがあって。毎日通って最低3ゲームは投げていました。あの頃はスコア用紙も全部手書きで、それを家に持って帰って、今日のスコア、今月のアベレージ、今月のハイゲーム、ハイシリーズは何々って、書き込んだノートが2、3冊ありましたね。その頃はアベレージ185、6くらいありました。
――かなり投げていたんですね!アルバイト時代に、いつかここを自分がやると考えたことはあったんですか。
高橋さん
全然考えてない。全く。小遣い欲しさ、遊ぶ金欲しさです。あと仕事の合間に遊べる(笑)30ゲームとか40ゲーム。
――ボウリングの合間に仕事ですね(笑)でもそれが平成10年に運営を引き継ぐことになったとき、色々大変なこともあったのでは?
高橋さん
まぁ、そうだけど。でも面白くなりそうだな、と思いました。
――面白くなりそう?

高橋さん
以前は、開けとけばOKという感じだったんです。何故なら、当時はまだ会員さんが大勢いたから、会員さえいれば何とでもなるという感じでした。一方で、一般の方に対しては、特に何もしていませんでした。「どうぞ適当に遊んでいってください」という感じ。
だから、その層にもっと楽しんでいただくことを考えたら、いくらでも伸ばせるなと。前職のヨーカドーで十数年やっていたし、ここでバイトもしていたし、お客さんと話す楽しさもあったし。あと「能代に帰って来られる」というのもありました。今考えると、甘かったですけどね。
――運営を引き継ぐことに、迷いはなかったんですか?
高橋さん
なかったですね。周囲からは「大学卒業してボウリング場かよ」ってよく言われました。親父は「ボウリングは水商売」って言ってたしね。お客さんが入る、入らないで収入が増えたり減ったりするから。でも、その水商売の水を増やすのが楽しいんだよね。
――水商売の水を増やす、その一言に高橋さんらしさを感じます。


バックヤード奥のオフィスに佇む高橋さんのチェア。高橋さんがここで過ごした年月を物語っている。


京都が大好きという高橋さん。歴史や思想、文学、写真など、蔵書のジャンルは多岐にわたる。
お客さんが来る理由をつくる
――引き継いでから、何かを変えていったんですか?
高橋さん
引き継ぐ以前は、会員様向けのイベントは時々やっていたけど、それ以外のフリーの方、特に親子とか中高生向けのものは全くなかったんです。来たら「はいどうぞ」で終わっていた。だからそれを変えました。フリータイムチャレンジってわかります?
――すみません、わからないです。
高橋さん
一定の期間内に、好きなときに3ゲーム投げてもらうんです。それでスコアで順位をつけて、飛び賞で景品を出す。賭けボウリングの長期版みたいな感じ。私が来る以前もやっていたんだけど、景品がお酒とか、お米とか、おじさま向けの商品ばっかりだったんですよ。それを変えました。
私が東京でボウリングしていた頃、客として体験したフリータイムチャレンジを参考にして、
フロアに商品をいっぱい並べたんです。組み立て家具とか、おもちゃとか、いろんなものをばーーっと並べて。それはもう、魅力的に。それをやったら、なんと初回で600人以上申し込みが来ちゃった。
――すごいですね!
高橋さん
ちょうどカシオのG-SHOCKが流行りだした頃で、景品として5、6個並べたんです。それを1000位とか1200位とかに置くわけですよ。そうするとG-SHOCK欲しさに、1200人とか1300人きましたね。
あとは、カレー大会かな。全国のご当地カレーを通販で買って、それを並べてやりました。その後もやりたいなと思いつつ、なかなか手が回らなくて、今は止まっている状態です。
――それ、やりたいですねえ。絶対参加します!でも実際やるとなると、集計も大変ですよね。
高橋さん
私がExcelに打ち込んで、毎日新しいスコアを出して、A4の紙をつなげて貼って。そうすると、やっぱり目に見えるんですよ、お客様がどんどん増えていくのが。あの頃はそれがすごく楽しかった。でもその後で、ネットショップを作ってからが地獄の始まりでした。



本邦初公開?の機械ルーム!男心をくすぐるメカと工具だらけの空間にムネがトキメキ。



アメリカ製の古い機械。独自の様式美は、古典的なSF映画に出てくるタイムマシンのよう。
楽しい場所の裏側で
――ネットショップが地獄の始まり!? どういうことですか?
高橋さん
頑張れば頑張るほど、ネットでボールやグッズが売れたので、売り上げを追うのが最初は楽しかった。でもだんだんそっちの対応が忙しくなりすぎて、目の前にいるお客様の対応に手が回らなくなってしまったんです。しかも「販売価格は全国一律の決まりを守って売らなければならない」とか、「翌日までに必ず発送しなければならない」とか、細かいルールに縛られ、とにかく忙しいけれど、でも利益は、、、という感じでした。オリジナルの商品があれば、またそこで稼げるかもしれないけど、それはなかなか作れるものじゃないからね。
――今はAIのおかげで楽になりましたが、昔はほぼ手作業でしたよね。
高橋さん
代理店から「こういう商品が出ます」と画像が来るんです。それを当社のネットショップのページに載せるために、サイズ調整して、文章をコピぺして、価格を打って。1商品あげるのに10分くらいかかるかな。売れたらメール対応もあるし、出荷もある。それを全部、私とスタッフの二人で対応していました。あの頃は、(まぁ今もですが)夜中までかかって受注管理と出荷の手配をしていましたね。
――色々大変、というか、落ち着いて経営を考える時間もないですね。
高橋さん
ないですね。毎日、目の前のお客様のこと、機械のこと、商品のこと、そればっかりです。結局、一番の問題は人。スタッフの数が全然足りないってこと。ハローワーク以外にも、ブログとかでも募集してるけど、誰も見てないんですよ。何をしても効果なし。
――すごくわかります。採用は、コロナ以降さらに大変になりましたよね。そんな苦労しても守りつづけているこの場所のことや、ここで遊んでいるお客さんのことを、高橋さんはどのような思いで見つめていますか?

高橋さん
ボウリングをしようが、バッティングをしようが、あるいは何もせず、一息ついたり、ベンチに座って話をするのでもいい。他のお客様にご迷惑をおかけしないかぎり、好きに過ごしてもらえればと。ここがお客様にとって、心安らぐ、楽しい場所であればいい。それが理想です。取りあえず行くか、みたいな。あるいは、ちょっと入ってみようかな、顔出してみようかなっていう場所。そういう場所にしたいんです。だからゲームコーナーもちょっと考えたいんです。でもそのためには、まず稼いでいかないと。何をやるにしても、ギリギリで回しているのが辛い。
――前々から思っていましたが、併設されていた喫茶スペースがもったいないですよね。ここでカフェとか、お店をやる人がいれば、ここに来る目的が増えるのに。
高橋さん
ほんと、それは常々思っているんだよね。大榮さんでやりませんか!?
――うちは親子代々、建具をやるしか能がないので…というか、能代の木材業界で、本業以外のことに手を出して成功した人はほとんどいないんですよね……。
高橋さん
そうなの?厨房機器はすべて処分しちゃったから、一から始めるのは大変だと思うけど、何かやりたいという方がいれば、本気で考えても良いんだけど。
ーカフェスペースの活用にご興味がある方は、ぜひ高橋さんにご連絡をー
高橋さん
喫茶スペース以外にも、実はこの施設の中には、使われなくなって死んでいる場所がたくさんあるんですよ。使われなくなったもの、ゴミ、死んでいるものが溜まっている。歴史が、そこに溜まっている。それをすべてまっさらにしないと、ここは良くならないのかなって思っているです。
笑顔の発信基地
――お聞きすると、なかなか厳しい状況のようですが、それでも毎月欠かさず「家計応援ボウリング」のイベントを開催されてますよね。私たちも以前参加させていただきましたが、めちゃめちゃ盛り上がって楽しかったです!
高橋さん
来てくださるお客様の家計の足しにしてもらえれば、、という気持ちで、食材やお菓子、日用品などの景品を貰えるイベントを始めました。最初の頃は、玉ねぎ、にんじん、肉、そして最後にカレールゥ。つまり最後にカレーが完成するよ!というアイディア(笑)
――卵をゲットできると正直かなり嬉しいです!でも気になるのは、あの熱量のイベントをやるのって、かなりの重労働なのでは?
高橋さん
あのイベントは、スタッフの庄司が本気で拘って毎月やっています。ゲーム中にかけるBGMも、毎回必ず変えていますし、景品は彼女が全て自主的に、地元や秋田まで探しに行いくんですよ。しかも同じものは当分出しません。

スタッフの庄司さんは、上品さとチャーミングさを併せ持った素敵な女性!
高橋さん
毎回苦労しているのを横で見ていて「無理して続けなくてもいい、そろそろ止めようか?」と声をかけたこともありますが、それでも無事に終わると「またやって良かった。」って、次回の構想をあれこれ考えてるからね。本当に、ありがたいですね。
――ボウリングが下手でも楽しめて、景品を貰えるような工夫がされていて、めちゃくちゃ盛り上がるので、初めての方もぜひ参加して欲しいです。物価が上がり続けている昨今、リアルに嬉しいイベントです。
高橋さん
今の時代、何でボウリング?っていう人も多いと思います。でも「絶対潰さないでください!」とか、「ここがなくなったら、俺たちどこに行きゃいいんですか!?」と言ってくれる高校生たちもいる。そんな彼らに、「絶対甲子園に行けよ!」って、「お前たちの顔をテレビで見たいかなら」と声をかけ、ボールを磨くふりをして、私たちはいつも見守っています。この街に、お客様や、彼らの笑顔が残り続けていって欲しいのです。そして笑顔の発信基地が、この場所であったら良いなと思っています。
――高橋さんにとっての能代スポーツセンターとは「笑顔の発信基地」なんですね。
高橋さん
そうしたいし、そうであったらと。まだまだ努力が足りないけどね。

能代スポーツセンター https://noshiro-bowl.com/
〒016-0831 秋田県能代市元町14-6
TEL:0185-52-0154
定休日:火曜日・水曜日
営業時間:12:00~22:00(平日)
11:00~22:00(土・日・祝)
