絹と木と土 ①

 今年4月、能代市二ツ井にオープンしたライフスタイルグッズのセレクトショップ「絹と木と土」。オーナーの村上さんと意気投合し、ショップ内の建具を当社にて製造・納品しました。

 二ツ井は、秋田県北部に位置する自然豊かな町で、天然秋田杉の出荷港「木都能代」と深く結びついた地域です。町のそばを流れる米代川は、かつて山から伐り出された木を運ぶ大動脈でした。上流の仁鮒や水沢地域で伐り出された丸太は川に流され、人の手と水の流れによって下流の能代へと届けられました。そうして集まった丸太が、能代の木材産業を支えてきたのでした。山から川へ、川から町へ、そして丸太から木材に。木はこの土地の中で、かたちを変えながら、人の暮らしと結びついてきました。その記憶が、今も静かに息づいている場所です。

 しかし道路が整備され、木材の輸送が陸路へと移り変わり、木材そのものの需要も減った今、かつての賑わいはありません。筏流しや、それに関わる様々な商売に従事していた人々は、いまどこへ消えてしまったのでしょうか。ただ、川は変わらず流れ続けています。その静かな水面を見ていると、この土地に積み重なってきた時間の気配だけが、いまも確かに残っているように感じられます。

 オーナーの村上さんと知り合ったのは昨年の今頃。コーヒースタンド「Magic Hour Coffee」をネットで見つけ、何となく気になって、店に突撃したのがきっかけでした。初対面では「独特の雰囲気の人だな」と感じましたが、そのキャラクターに惹かれ、気づけばほぼ毎週のように通うようになっていました。昨年は、能代にバスクチーズケーキのお店もオープンし、まさにノリに乗っている同氏の新たなプロジェクトが「絹と木と土」です。村上さんの会社で製造するシルクのパジャマやシーツの寝心地を堪能できる宿泊施設に加え、岡山の陶芸家・森一朗さんの備前焼の器、そして当社の木製建具を見て、体験していただけるショールームが併設されています。

 建物の裏手には、いまも米代川が静かに流れています。かつて木を運んだその川のそばで、いま再び木材の価値を伝える場が生まれていることに、不思議な巡り合わせのようなものを感じます。(②につづく)

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この記事を書いた人

株式会社大榮木工、三代目代表の能登です。
木都・能代に根づく木の文化、職人たちの手仕事、そしてふるさとの風景。
日々のものづくりを通して見えてくる、木と人、土地とのつながりを、三代目の視点で綴っていきます。
自社製品のこと、受け継いできた技術のこと、少し不思議で心惹かれる場所のこと。
大榮木工の過去と現在、そしてこれからを、静かにお届けできればと思います。